2013-09-21

この判決には納得できない

こんな記事があった(中日新聞|CHUNICHI Web 「波紋呼ぶ賠償命令 認知症男性はねられJR遅延http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2013082902000002.html

私も,介護の大変さをよく知っている。その立場からいえることは,介護をする家族が実はどれくらい身も心もすり減らしているか,結局,JRの関係者には分かっていないということだ。JRほどの企業なら法律部門があるだろうから,分かっていないのは,その部門の人間なのだろうか。だが,法律部門のいうとおりだと思ったから実際に訴訟を起こしたのだから,JR自体がその程度でしかないと判断することができる。そう思う。JRの上の方には,誰一人「やめとけ」といった人はいないのだろうか。

それに,法律はどうあれ,JRは加害者ではないのか?ひき殺したのではないのか?もちろん,法律上は責任はないのだろう。だから私も,法律上の責任をとれとかいうつもりはない。だが,もし私が何かの事故で加害者側の立場だったら,「オレだって仕事ができずに大損害をだした」といって被害者遺族を訴えてまで損害賠償を求めたりはしないだろう。法律や状況とは関係なく,私のせいで(被害者が)亡くなっているのだから。

まだある。線路に入りこんでいたのだから,亡くなった―いや,あえて言おう―JRの電車に殺された男性が悪いって?それじゃぁ,線路に入りこんだ人が,JRにせよ,他の私鉄にせよ,電車や列車にひかれてしまったのは今回が初めてだったのかい?そうじゃあるまい。いったい線路上で何人の人の命が失われてきたのか教えてもらいたい(もっともそのたびに少なくとも東海地方の鉄道会社は遺族に損害を賠償しろと言ってきたようだが)。

まだまだある。JRは,「法律上求められている安全義務はすべて果たしている」といっているようだが,線路上でひかれてしまう人が後を絶たないとすれば,それは法律のせいだと言いたいのだろうか。たとえそうだとしても,危険を放置していることにはかわりないだろうに。危険だと分かっているのに何もしないことを「安全義務を果たしていない」というんだよ,日本語では。侵入防止策は講じていると主張しているそうだが,たとえば20年前の踏切も今年の踏切も,侵入防止策としてはまるで同じに見えるのは私だけだろうか。それとも最近ではセンサーでもついていて(この訴訟では男性宅の出入り口の一つにはセンサーがあったそうだが),誰かが侵入しようとすると防止柵でもとびだしてくるようになっているとか?あるいは運転士に通報されるようになっているとか?それとも,電車にはもうレーダーみたいなものがついていてATSとは独立して危険を察知すると徐行したり停止したりするようになっているのかな。

まだあるぞ。亡くなった男性の監督者たる家族には四六時中の監視を求めた裁判所。JRは線路上で何人も被害者を出しているのに,最も侵入の可能性の高い場所でさえ24時間見張ってろとは言わないんだね。24時間365日,介護に心身をすり減らしている私たちは,どうせサイレント・マジョリティ。裁判所には,大声を出して拳をふりあげている者しか見えないんだね。

むかし,社会科の時間に,「裁判の時,裁判官は法と自己の良心にのみもとづいて判断するんだぞ」って教えられて,胸が熱くなったことを覚えています。果たして本当にそうなのかどうか,その時の先生は幼い私たちに分かりやすく教えようとして言っただけなのかもしれませんが,一時は真剣に法律家への道を選択肢の一つにしていた私は,ほとんどの裁判官は,幼いあの日にあこがれたような裁判官だと信じたい。

かたつむり

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